謙虚御無用

 彫刻家吾妻兼冶郎氏が作品を出した ビエンナーレでは予想外のシーンがあった。
セレモニーの挨拶が終わって 彼は各テーブルを声をかけながら回って歩いていた、その頃我々の前の椅子には30代と思える外人2人が軽く手を上げて座った。
ボクはイワオと2人だったから、どうぞと身振りで応答した、するとそのなかの1人が彫刻の「MU」とはどういう意味なんだと聞いてきた。
イワオはLAに住んで5年の24歳 昼間は学校夜はでバーテンをしていて 英語は達者な筈だが流石に禅については旨く説明できないでいる。
「英語は旨くしゃべれないんで、、、」と日本人特有の謙虚さが顔に出、相手はサド心に火がついて質問を畳み掛けてくる。
 じゃあ フランス語は? NO ドイツ語は? NO スペイン語はどうだ? NO 「それでよくアメリカに住んでいられるなあ」と思いっきりに莫迦にされた。その頃ちょうど吾妻さんが彼らの背後まで来ていておおよその事は理解できたらしい。イワオの背に周り肩に手を置いて「やあ」と声をかけながら 何やら耳元でイワオにささやいた。
突然イワオは競馬馬が鞭を当られたように シャンと背筋を伸ばしてニタッと笑いながら じゃあ君たちは中国語はしゃべれるのかね? NO 韓国はどうだ? NO ベトナム語カンボジア語はどうだねNO ラーメン ワンタン チャーシューメン ハッポウサイ!旨いんだけどなあとたたみかける。
それを聞きながら吾妻さん 相変わらずにニコニコしながら 相手の顔を見ながら何やらイタリア語でしゃべりだした。
判ったわかったとばかりにその2人組み 立ち上がって手首を下に何度も振り 逃げるように足早に去っていった。

                                  続く




 

ダウンサイジング  2

 ガャラクシーは新緑の季節 お邪魔虫を後部座席に乗せて 海沿いの道をサンフランシスコに向かった。
カーナビもスマホも無い時代 気の向くまま風の向くままの気楽な旅だ、バックミラーに移る吾妻さんは ボクよりは一回り半位上 40代半ばと思われいつも ニコニコと笑顔を絶やさない。
”悪党は常に笑顔でやってくる”と箴言にあるそうだが彼には当てはまりそうも無い、去年はドイツで作品を作っていたとかで「いやあ、、、とんでもない恥さらしをやってしまってねえ、、、」
製作中に見物に来たドイツ人夫婦が 我家に泊まりなさいと 二階の一室を提供してくれたのだという。
朝目覚めるとなにやら料理の匂いがするので 階段を降りてみると夫婦共、素っ裸で料理を作っている真っ最中、
アリャア ドイツじゃあこんな風習があったんだっけ と急ぎ部屋に戻って彼も素っ裸になって「グーテンモルゲン」とオレは裸に慣れてるぜーという顔をして階段を降りた、んだそうだ。
驚いたのはかのご夫婦 奥さんが腰を抜かしかけ ご主人に支えられてやっと踏みとどまったんだとか。

あのドでかい磨かれた鉄の塊 そこに鼠かモグラが食い荒らしたような穴 ユーモアなのか洒落なのか、彼の作品を語るにはこのドイツの裸体験を抜きには語れまい。

                               続く



ダウンサイジング

 次の車が来た、ダウンサイジングした日産ノート中古である。
ぼくは相変わらず抗がん剤を使用していて、体調がいまいち、車選びでは長男に任せっぱなにした。
仲間の中には業者しか入れない鑑札を持っている男もいて オークションで妻が取り回しやすいノートを選んでくれた。

免許を取って62年夫婦で18台を乗り継いだ事になる、1964年東京ではオリンピック ロスアンジェルスではビエンナーレが開かれていた、日本からはミラノ在住の彫刻家 吾妻兼二郎氏が「無」というタイトルの作品を丘に上に立てていた。
何?禅の坊主が日本代表で鉄の塊を立てたのか、とばかりにオ−プニングパーティに行ってみる、12〜3の高さの磨かれた鉄の塊に何やら虫食いのような穴が開いている。
回りには10宅程のテーブルがしつらえてあり それぞれのグループが談笑していた、その間を吾妻さんが挨拶をして回っていた。我々のテーブルに来た時には、やっと日本語が話せるぜと緊張がとれ 人なつっこい笑顔を見せた。
どこからどう話が転がったのかは忘れたが タカオは先週結婚し 明日から新婚旅行ドライブで サンフランシスコ
迄行く予定である事をイワオがしゃべった。
すると吾妻さん「ボクも乗せていけ」と即座に言う 「そりゃあ新婚さんのお邪魔でしょう」とイワオが言えば
「ボクは人に幸せを邪魔するのが大好きでねえ」まるで10年来の知己の様に屈託が無い。
だからボクには甘い新婚の思い出というのが無いのだ、ギヤラクシーはこの時にやめて ダウンサイジング、クーペにしておけばよかったんだ。

続く




明けましておめでとう

 今日は旧年では元日、明けましておめでとう。
新年ではもう二月,時のたつ早さに驚いている、沢山の方たから年賀状をいただいたが今年は欠礼してしまった。
抗がん剤の副作用は髪だけではなく、まつげ鼻毛髭までそっくり抜け落ちてしまった。
もう二度とつぶらな瞳を鏡で見ることも出来そうに無い。
二年凶年が続いたから 今年はそろそろ福が回ってきてもいいんじゃないか、と期待したがどっこい愛車のスバルレガシーがイカレてしまった。親会社がパワステに不具合を起こし それに子が感応したという訳なのか。
中古で買ってから8年で約10万キロ乗った事になる、新車で入れた初代ジィーゼルエンジンのパジェロ、25万キロ走ったからえらい差がついたもんだ。

LAではギャラクシー(銀河)に乗った、ワッツで暴動があった1963年鎮圧に向かうロスアンジェルス警察の車がフォードギャラクシー 開け放たれた窓からは 4本の銃がアンテナのように突き出されていた。
これに刺激されたわけではないが 僕もギャラクシーにした、それに乗ってフリーウエイを走ること2〜3分
白バイに捕まってしまった。
ポリスが言うには 「前の車を追い越す時に3〜4回のフラッシャーで車線を変えてしまった、もし後ろのドライバーが年寄りだったりご夫人だとすると事故になる可能性がアル」と切符帳を取り出した。
6尺豊かな大男皮の長靴をびしっと決めてカッコイイ、私の妻は貴方は「グッドルッツキングだといってますよ」
と伝えれば ウ〜ンと天を仰いで「判った 東京並の運転はクレージイ やめてくれよ」とキップ切りは諦めてくれた、持つべきものは良妻である、
さて次はどんな車にしべえか考え中である。


出入り

 ヤバイなあ と思ったのは車で病院の敷地を出て、神社の駐車場で一服つけたときである。
抗がん剤の副作用が激しくなるのは、点滴が澄んで5日目から10日目なのだ。
丁度晦日から正月の三が日、息子家族が見舞いをかねて 遊びに来る日と重なる。
心配の種は、頭髪はもう抜けてしまったからいいが、足の指手の指のシビレと便秘 下痢である。
下痢便秘は何度か経験しているので 弱中強と三種の薬をもらってあるし 使い方も心得ている筈であるのだが、
その時の体調もアリ 計算どうりには行かないことを知っているからこそ ヤバイのである。
トイレに出たり入ったり「オジィチャマ早く出てよ」等と言われる無様は孫には見せたくない。
ダンディなおじいちゃまは 今さら無理だとしても 多少の見栄は張りたいもんだ。
大晦日元日は穏かに済んだが 腹の張りが感じられるようになった、元日に弱を飲んで二日に中を追加する、孫達はバトミントンと凧を持って海浜公園に行く、3時間は猶予がある筈。
下痢はその気になっても ガスなのか物なのかが しゃがんでみないと判らない、とその気になったらパンツを下ろして見ることしか方法は無い。

 それでもトイレへの出入りを繰り返し なんとか大願成就がかなった時には 三枚のシャツがジットリ汗ばんでいた。内湯に入っていい気分に浸っていたら、
恐ろしきは
           地震 雷 火事 おやじ は昔の話。  地震 雷 下痢 便秘だなあ いやガン 便秘じゃないかなあ と思案中 「 ただいま〜 」と元気な声が聞こえてきた。

クリスマスプレゼント

 12月25日クリスマスは サンタからのプレゼントを受ける日 何かしらいい事があってもおかしくはない日である。
ボクにとっては抗がん剤の点滴を受ける日でもあった、朝9時に熱海厚生福祉大学病院に行き、採血、採尿を済ませ点滴の為の注射が手首にまかれる、そして待つこと一時間半、採血の結果が出て主治医判断を聞いて 点滴を1時間半。
ナンヤカンヤで計5時間かかることになる。
待ち時間は駐車場まで3階を下りて 車で寝て待つか図書コーナーで本を読むかしかないのだ、点滴の副作用で頭髪は抜け、まつげは抜け髭も全部抜けてしまった、まつげは付けまつげという手も無い事はないが。
下痢と便秘を繰り返し、三半規管がおかしくなり、鼻水が出て鼻血もでる、急に20歳も年を採ってしまったようだ。
と考えている時にサンタが現れた、がん科学治療法の副主任が 治療室のベットを空けてくれたのである、これならば点滴を受けながら寝ていればいいということになる ナンボ楽になることか。
サンタお姐さん クリスマスプレゼントをありがとう。

                       
                                 


飛脚便 その2

 スマホの便利さ実用性は モペットの御蔭でいやというほど 知らされたことになる。
週末には次男の嫁が孫達の写真 動画を送ってくれるので 便利さは判っていたが 送る側になるとは考えていなかった。
動画では運動会やお転婆ノリのブランコ 3歳の孫の湯船の掃除の様子等を楽しませてくれる。こちらから
孫にジジババの写真送れば 莫迦にされるのはわかりきっているし、、、。

ガラケイの電話帳やスマホの L I N Eを開いても 文章を送れる相手は限られている。
10代ならば糸電話 その前黄泉の人なら飛脚便と伝書鳩でいいが 面倒なのは六十代半ばから七十代半ばで 会社勤めをしていたと思われる人種である、地位があって面倒なS N Sは部下にやらせていた という桜田義孝大臣的人種、退職したら何も出来ない男が ワンサといるから困る。
奥さんにメールを送って本人の意向を又奥さんが返信してくるという男もいる。
それ以上90代ともなれ ば固定電話か病室に見舞いということになるから それはそれで諦めが付く。

ノートに電話帳を作って 人名年齢をメモって置くしかないのだ。名前と年齢と最近のボケ具合を記入しておくのがいい、
ただなあ 自分のボケ具合が自分で判定できないのが難だ。

飛脚便 その1

 「面倒臭い時代になったもんだね。」
 「いや便利な時代になったんですよ 」と正反対の意見は 年回りが二周りほど下のО君である。
彼は理系 こちとらは自慢じゃないけど文系である、愛用していたモペットを彼に頼んで オークションにかけてもらった。
彼は愛知県在住で ポートレート塾の第一期生ということになる。
モペットの写真をとり ハガキ大に紙焼きをして、、、とやっていたが埒が明かない。マンションに住むデザイナーに頼んでスマホで撮りО君に送ってもらった、このデザイナーは50歳である。
他にもサドルの表面がめくれて見えるとか、強化したブレーキってどれ等と質問が来ると いちいち他人に頼むわけにはいかなくなった。
さほど難しい事ではない事は判ったのだが、得意といえるにはまだ時間が掛かりそうだな。

モペットの落札者は決まったが配送が出来ない、年末荷が立て込んでいるから 年内は受け付けられないという。
業を煮やしたО君愛知県から 兵庫県高砂市まで運んでくれる事になった、二代目社長業があるのに どうにもありがたいというか申し訳ない思いである。
昨日自宅に帰って 今日落札者の住む兵庫県高砂市まで行ってくれている筈、渡したと連絡があったら土下座して
参拝九杯せねばなるまい有難い事である。

                                    続く

愛 着 

 もし もしだが医者がOKしてしてくれるなら、もう一度買い直すに違いない、トノサマガエルが風邪を引いたようなあのエンジン音でさえも、なぜか離れがたい。
4200Kmほどのって小松ゼノアのエンジンは絶好調、 
「何もオークションにかけるのに タイヤを新品しかも 買った当時のホワイトリボンの倍以上だぜ、おまえバッカじゃないの」といいたそうそうなバイク屋。

 ”籠に乗る人 担ぐ人 そして草鞋を作る人”
そんな時代からしてみれば FK310に乗る人は 籠に乗る人に当るだろう。
長い距離重い荷物、妻と一緒ならば車、ちょいと町までならバイク となるとFKの出番は天気のいい 気分のいい又は運動不足と感じられる時に限られる。
テニスでおばさん達にいじめられるのを避けたいから 脚力は鍛えておかねば。
海抜200mの所に住んでいれば、くだりはエンジンは必要ないが 登りは足で補助してやらねばかったるい、まあこれが脚力を鍛えてくれるわけだが。

 スーパーに停めればおばさん達に,公園では子供達からの質問攻めにあう。白バイに停められた時には驚いたが小田原署の白バイ、小田原市内では見たことがないという。
前に住んでいた二子玉では良くかけたが、湯河原あたりでは珍しい乗り物となるわけか、バイクより背が高くヘルメットを乗馬用のスエード調としているから 悪眼立ちするのかもしれない。

「もしも」がもうひとつ許されるなら あと10歳若返ってこのモペットを楽しんでみたいもんだ。

愛 着

 我家で家庭医としてお世話になっている 岩崎クリニック。
そこの女医先生は「庭の枝払いなんかしちゃだめよ、骨が柔らかくなっているから ちょっとした事でも大事になるわよ」
熱海の大学病院の主治医は「なに? モペット! バイク!それは即刻棄てなさい!」と頭ごなしに言われては反論する余地など無かった。
こんな山奥に住んでいるとバイクはとても便利だし、モペットは他の乗り物には変えがたい 楽しみを感じさせてくれる乗り物なんだけどなあ。
 痛み止めに強い薬を飲んでいるから 諦めるしか方法はなさそうだ。
バイクはヤマハの原付、今は作っていない中古の2サイクル 出だしはいいパワーはあるで申し分ないバディだった。
知人の孫が大学に入って バイクを欲しがっているというので もらってもらった。
残るのはFK310エンジン付き自転車 モペットである。
俗に出来の悪い子ほど親は可愛いとか、こいつも手が掛かった、フューエルメーターが無いので2Lの大型タンク、
エンジンが掛かりやすいオートデコンプ取り付け、ブレーキの強化、両立のスタンド、マフラーカッター等。
オークションに出す為にと点検してみたら タイアのひび割れが目立ち交換と、とにかく出来の悪い息子ではあるけど
なぜか情が移ってしまったこれを 愛着というのだろうか。
                  
続く



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